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メキシコの食べ物あれこれ

メキシコ料理をご紹介する前に、メキシコのオリジナルな食べ物についてご案内します。


1)メキシコ原産のトマト、チーレ、トウモロコシ

メキシコ料理をご紹介する前に、メキシコのオリジナルな食べ物についてご案内します。 メキシコ原産の食用植物は多々ありますが、なかでも最も代表的なものはトマトとチーレ(唐辛子)とトウモロコシです。

トマトとそのペーストはイタリア料理に欠かせない食材ですが、イタリア料理にその利用が始まったのは16世紀、スペイン人が当時ヌエバ・エスパーニャと呼ばれていた現在のメキシコから持ち帰ってヨーロッパ各地にトマトを広めてからのことです。また、そば、焼き鳥などの日本料理に風味を加える唐辛子も、もとをただせばメキシコからヨーロッパ経由で中国に持ち込まれたチーレが、そこから日本に伝えられたために唐の辛子と呼ぶ習わしとなったものです。メキシコ原産のトマトとチーレが世界各地の料理を大変美味しくした功績は大です。

トマトは茄子科の植物で、ナワトル語ではtomatol(食用となる緑色の果実の意味)と呼ばれていました。そのなかでもxitomatol(スペイン語でxi=jiは赤を意味しますので赤いトマト)と呼ばれた種がヨーロッパで広く受け入れられ、各地で黄金のりんご(イタリア)とか、愛のりんご(フランスほか)とか名付けられて料理の調味に重宝されるようになりました。20世紀に入ってからはトマトの高カロリーと消化力、含まれているビタミン類が注目され、トマト・ジュースをアペリテイフとして飲む習慣が米国から始まりました。

チ-レは舌を刺す辛さを意味したナワトル語のtzirがスペイン語に取り入れられ訛ってchile となったものです。スペイン語ではahiともpimentaとも呼ばれます。トマト同様に茄子科に属しており、40を超える種類が知られています。古代メキシコ人は野菜として食べ、また調味料サルサ(ソース)の原料にしただけでなく、その薬効にも注目した使い方もしていました。現在メキシコで普通に見られる種類はpasilla, jalapeno, serrano. ancho, chipotle, cascabel, mulato, piquin, poblano, guajillo, mulatoなどです。

トウモロコシはご存知の通り、今から約6000年前にメキシコのウアステカ地方で野生種から交配などにより先住民が栽培活動によって作り出したものです。メキシコ市の国立人類学博物館に展示されている現地から出土した当初の果穂は長さが5センチにも足りない可愛らしいもので、その実は小麦のように一粒づつさやの中に納まっているものでした。今日ではトウモロコシは人の食用また家畜の飼料としてほぼ全世界で栽培されております。

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メキシコ大使館観光部提供

2)トウモロコシの様々な食べ方

メキシコでは古来トウモロコシは様々な方法で調理されてきましたが、なかでもトルテイーリャはその代表的な食べ方で、メソ・アメリカのパンとして親しまれて来ました。

トウモロコシを粉にし、少々石灰の入った水を加えて練り上げたマサ(塊)をちぎり薄く(1~2ミリ)丸く伸ばし、鉄板上でクレープ状に焼き上げたトウモロコシのせんべい、それがトルテイ-リャです。トルテイ-リャの中に肉や野菜などの具を挟んで、あるいは載せて、サルサをかけて食べるのが最もポピュラーな料理、タコスです。またトルテイ-リャはカスエーラ料理(素焼きの土鍋で肉や野菜、海岸地方ではイカ・タコを含む魚類を煮込んだ伝統的な料理)などと一緒に、数枚重ねて保温のため布に包まれたり籠に入れられてテーブルに出されます。トルテイ-リャに料理を挟んでタコスにして食べたり、料理の合間に私たちがご飯をいただくように食べたりしています。16世紀メキシコに住み新大陸自然史を著わしたベルナルデイーノ・デ・サハグン師は先住民がトルテイ-リャやタマール(後述)をトマト、チーレ、かぼちゃなどの野菜、グアホロテ(野生の七面鳥)などの鳥類や鹿など動物の肉、蛙、はんざき、魚、グサーノ・デ・マゲイ(龍舌蘭に付く毛虫)、蝗やそのほかの昆虫類を料理して一緒に食していたと著書のなかで報告しています。

今日でも、タコスに用いられる具は実にバラエテイに富んでおり、街角のタコ屋では、日本のにぎり寿司屋のように、店内に飾られている材料の中から、お客さんが「マチート(腸詰め)、カルニータ(塩煮した豚肉)、ナーチョ(鼻先)・・・」あれこれ好みの具を注文し、店の親父が「あいよ」と指定された材料を取って、切り刻んで炒め、それをトルテイ-リャに載せ皿に盛り付けて、サルサ、これもお客さんの好みのものをかけてサーブします。また、トルテイ-リャを用いたさまざまな一品料理、おつまみ料理があります。エンチラーダ、ケサデイーリャ、チラキーレス、チャルーパ、ソーペス等々はメキシコ料理店のメニューで皆さん既にお馴染みのものでしょう。

パンとしてのトルテイ-リャのほかに、トウモロコシはメイン・デイッシュ(主皿)としてタマール(tamal)、スープとしてポソーレ(pozole)、飲み物としてはアト-レ(atole)として食べられています。タマールは粗挽きのトウモロコシ粉を練った塊の中に肉そのほかの具を入れトウモロコシの果穂の皮とかバナナの葉で包み蒸しあげたもので、中身、味、大きさなどでさまざまな種類があります。この食べ方は新大陸内にトウモロコシの伝播とともに広く各地に伝えられたようで、例えばアルゼンチンの北部でも同じ食べものが食されています。

ポソ-レはトウモロコシを粒のまま、肉、たまねぎ、チーレ、レタスなど野菜と一緒に煮込み、リモンとオレガノなどの香料で味付けしたスープです。内容と味付けで多くのバラエテイがあります。

アト-レは後述しますが、トウモロコシの粉を水に溶き、牛乳、あるいは果汁、アーモンド粉などを加えて沸騰させた飲み物です。もちろん、トウモロコシの果穂(mazorca、南米ではタンゴの曲名として有名なchocloと言う言葉を用いる)を丸ごと茹でたり、火にあぶってアッアッのまま塩、粉チーレ、粉チーズを塗って、更にレモンの絞り汁をかけて頬張るのも美味しい伝統的な食べ方です。このほかパロミータス(ポップコーン)や、米国ではじまった朝食用のオフエーラとしての食べ方、また最近ではトウモロコシを味付きチップスに加工した新しい食べ方もあります。

また、トウモロコシ果穂に付着する黒っぽいキノコ菌ヴィトラコーチェは珍味としてケサデイーリャなどの格好な具として美味しく頂かれています。

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メキシコ大使館観光部提供

3)そのほかのメキシコ原産の食用植物

メキシコ原産の食用植物は多々ありますがその中でも最も重要と思われるアボカード、フリホル、カカオ、バニーリャを選んでそれにまつわる話などをご紹介したいと思います。

アボカードはクスノキ科の熱帯常緑樹の果実で、ナワトル語ではahuacati(なんと、きんたまの意味)と呼び、これがスペイン語では訛って aguacateと発音され、更に英語ではavocadoとなりました。果肉には脂肪分と蛋白質が多く含まれる栄養たっぷりの食品です。果肉を細かく刻んだ玉ねぎや香草シラントロ(cilantro)と混ぜ合わせると美味しい植物性バター、ワカモ-レ(guacamole)が出来上がります。肉料理に付け合せるサラダとして好適です。また、アボカードの果肉をそのままアッアッのトルテイ-リャに塗り、塩を少々振りかけたりトマトと玉ねぎのみじん切りソースで味付けして食べる方法もあります。

フリホル(豆)はナワトル語でayocotlと呼ばれていた豆で先住民の基本的食料の一つでした。スペイン語ではjudiaともalubiaとも呼ばれます。フランスでは16世紀の小麦の凶作時にフリホル豆が代用として役立った経緯があり、先住民の言葉の発音に近いharicotと呼ばれています。現在の名称フリホルfurijolはイタリアでの造語とされています。元来はさやも食されていましたが、今日では取り出された豆だけが水煮されフリホーレスとして、トルテイ-リャとともに、あるいはトルテイ-リャを割ってその中に薄く餡のように入れたり、あるいは肉、魚、卵料理の付け合わせとして広く食されています。

カカオはナワトル語でcacahuatl(cacauは一粒の意味)と呼ばれていた樹の果実で原産地はマヤ地域とされています。マヤ、トルテカ、アステカの諸族の間ではカカオの樹は神からの授かり物とされていましたので、この樹に学名を付けた際theobromo(神の食物の意)となりました。先住民は一つの果実に30~40粒入っている種子を取り出して擂り潰し、マゲイの樹蜜とトウモロコシの粉を加えて水煮しショコラテ(xocolatl)と呼ぶオリジナルな飲み物を作っていました。xocolatlはナワトル語のchoco,choco,choco(水のたぎる音)+latl(水)が合成されて出来た言葉で、スペイン人はagua de cacao(カカオ飲料)と呼びました。ショコラテは王侯貴族が愛飲していた高価な飲み物で、特にモクテスーマ王の大好物であったことは良く知られています。普通はxicalli(ひょうたんを半分に割って作った容器、又は素焼きの土器)で飲まれていましたが、モクテスーマ王は金の容器で飲んでいたとのことです。ショコラテを味見して感激したコルテスはこれをスペインのカルロス5世への献上品に加え、報告書の中でその興奮作用、精力回復力について「一杯のショコラテで兵士は一日の行進に耐えることが出来る」とまで絶賛しています。他方アステカの庶民にとってカカオは高嶺の花であり、食用よりもむしろ通貨として流通しており、時には偽造カカオが出回ったとのことです。スペインの植民地になってからも、メキシコに最初の造幣局が設立されるまでカカオは先住民が払う税金の支払い手段として用いられました。カカオ豆はスペイン王からフランス王に贈られ、フランス王からオーストリアのマリア・テレジア女帝に贈られ、これが契機となって砂糖やシナモン、バニラなど香料を加えたカカオの飲み物がヨーロッパの王侯貴族の間にも流行することとなりました。

今日のバニラを入れたチョコレート飲料は20世紀になってオランダのヴァン・ホウーテン氏がカカオから脂肪分を分離し水溶性のカカオ粉末を抽出する方法を考案してから完成したものです。

バニーリヤは芳香性オーキッドの一種で、トウモロコシと同じくウアステカ地方が原産地です。同地に住むトトナカ族の美女を捕らえに来たアステカの将軍が密林の中でバニーリャの芳醇なアローマに魅せられて、美女を捕らえるという本来の目的を忘れ、芳香の源を突き止めてtlixochitl(黒い花の意味)と呼ばれた木の枝と実を持ち帰り王に捧げたとの言い伝えがあります。以来、トトナカ族はアステカ王への貢物として美女の代わりにバニーリャを納めることが許されたとのことです。アステカ時代には天からの授かり物としてカカオ飲料に香りをつける添加剤として用いられていました。今日では先住民の付けた名前は忘れられ、スペイン語でさやを意味する言葉vanillaがその名前となっています。



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